以下は、2026年4月20日から24日にかけて、世界銀行東京防災ハブが防災グローバルファシリティ(GFDRR)と連携し、日本政府およびカナダ政府の協力を得て開催した「緊急事態への備えと対応(EP&R: Emergency Preparedness and Response)アカデミー」におけるセッションの概要です。
緊急事態や災害の影響は、すべての人に同じように及ぶわけではありません。災害時には、女性や子どもは最大で14倍高い死亡リスクにさらされ、障がいのある人々は4倍のリスクに直面するとされています。本セッション「ジェンダーと社会的多様性への配慮:誰も取り残さないEP&Rシステムの構築に向けて」では、制度的枠組み、早期警報システム、避難所運営・サービス提供、物資・資機材、研修・知識の蓄積というEP&Rシステムにおける5つの主要な領域において、ジェンダーや社会的多様性への配慮をどのように組み込むかについて議論が行われました。
フィリピン、ニジェール、コスタリカ、パキスタン、ルーマニアの各国の事例紹介に加え、参加型の避難シミュレーションを通じて、セッションでは誰も取り残さないEP&Rは単なる追加的な取組ではなく、効果的な緊急対応を実現するための前提条件であることが示されました。また、性別、年齢、障がいの有無などに応じて整理されたデータの活用、地域コミュニティが持つ知識や経験の反映、多様な情報伝達手段の確保を組み合わせることで、より強固なシステムの構築、災害リスクへの理解の向上、そしてすべての人にとってより強靱な対応体制の実現につながることも共有されました。
主なポイント
最も届きにくい人々に支援を届けるには
世界銀行のリード防災専門官、ゾイ・トロハニスは、早期警戒システムが最も届きにくい人々まで確実に支援を届けることの重要性を強調し、最も支援を必要とする人々や、情報へのアクセスが困難な地域に暮らす人々にも確実に情報が届く仕組みを整えることが不可欠であると述べました。この重要性は、ニジェールの取り組みで示されています。ニジェールでは、2027年までに全国民を対象とした早期警戒システムの普及を実現するため、国家レベルの調整拠点の整備やリアルタイムのシミュレーション訓練が進められています。警報の有効性は単に情報を発信できるかどうかだけで決まるものではなく、すべての地域住民に対して、理解しやすく、適切な行動につなげられる形で情報が届くかどうかによって決まることを示しています。
地域コミュニティとの連携の重要性
このセッションで実施された参加型の避難訓練では、緊急警報の受け取り方、内容の理解度、そして行動に移す力は人によって大きく異なることを浮き彫りにしました。参加者は、会場から最も近い避難所まで移動する避難訓練を体験しました。その過程で、移動に制約のある人、視覚・聴覚などの感覚に障がいのある人、その他の事情により避難行動に困難を抱える人々が、他の人には見えにくいさまざまな壁に直面することが明らかになりました。これは、すべての人を一律に対象とした警報や避難計画では、特定の人々が取り残される可能性があることを示しています。
参加者は、訓練を通じてその場で課題を共有し、解決策を検討しました。この経験は、誰も取り残さない緊急対応を実現するためには、地域社会の主体的な関与が不可欠であることを示しました。地域コミュニティは、支援を必要とする人が誰であるかを最もよく把握しており、警報を誰もが理解できる形で伝えることや、自力で行動することが難しい人々に直接支援を届ける上で重要な役割を果たします。したがって、地域社会との連携はEP&Rシステムを補完するものではなく、その中核を成す要素であることが改めて確認されました。
今後に向けて
効果的な緊急事態への備えと対応(EP&R)システムを構築するためには、地域社会の多様性や状況を幅広く考慮することが不可欠です。なぜなら、警報の有効性は、情報を受け取り、内容を理解し、適切な行動につなげることができるかどうかによって決まるためです。今回のセッションで実施された避難シミュレーションは、この重要性を改めて示すものとなりました。地域コミュニティは、個々に異なる支援ニーズを持つ人々を把握し、必要な支援につなげる上で重要な役割を果たします。今後の取り組みとしては、地域に根ざした早期警戒ネットワークの強化、誰もが利用しやすい警報メッセージの改善、障がいやジェンダーの視点を取り入れた初動対応要員の訓練、そして避難所をはじめとする施設や物資が、さまざまな社会的背景を持つ人々のニーズを踏まえたものとなるよう整備を進めることが重要です。