約1,000に及ぶ島々からなるソロモン諸島では、交通インフラは島と島をつなぐだけでなく、人々や企業を国内外の市場やサービス、雇用の機会へと結び付ける重要な役割を担います。地理的に隔絶された群島国家では距離が経済活動の制約となりやすく、包括的な経済成長と長期的なレジリエンスの実現には信頼できる交通が不可欠です。このためソロモン諸島の開発計画では、交通インフラが長期的に持続可能な開発を実現するための鍵として位置付けられています。
ソロモン諸島では政府が交通分野への継続的な投資を進めてきましたが、道路、港湾、空港といった主要インフラの多くは不十分な維持管理などの課題を抱えていて、一部の推計によれば道路網のうち「良好」もしくは「概ね良好」な状態にあるのは全体のわずか15%です。ここで特に重要なのは、ソロモン諸島は太平洋の小島嶼開発途上国(小さな島で構成される開発途上国)であり、交通インフラが気候変動や地震、津波、周辺地域の火山活動といった自然災害の影響を受けやすいということです。
こうした課題に対応するため、ソロモン諸島政府は世界銀行と連携して道路と航空を中心に交通インフラのレジリエンス強化に乗り出しました。この取り組みは「ソロモン諸島における道路・航空プロジェクト(2019~24年)」(Solomon Islands Roads and Aviation Project:SIRAP)によって実施され、交通分野では1980年代以降に世界銀行がソロモン諸島で実施する初の支援事業となりました。
世界銀行防災グローバルファシリティ(GFDRR)は、気候変動に強い道路インフラを整備するための技術支援を通じて、このプロジェクトの実施を支えました。マライタ州では厳しい気象条件にも耐えられるよう3本の重要橋梁の架け替えを実施し、これによって地域住民が市場や保健・医療施設、教育施設に、より簡単かつ確実にアクセス出来るようになりました。
「SIRAPはソロモン諸島政府にとって主要なインフラ投資であり、交通セクターの発展と幅広い経済目標の達成を直接的に支えるものです。SIRAPによる投資はマライタ州の道路と橋をより安全かつ気候変動に対し強靱にすることで、連結性の向上と経済活動の促進に大いに貢献しました。
ムンダ国際空港の滑走路改修および新ターミナルビルの整備は、ウェスタン州の観光、貿易、ビジネスの発展に新たな機会をもたらしています。また、首都ホニアラの代替となる緊急時の国際空港としての機能も提供しています」 — ソロモン諸島 マッキニー・デンタナ 財務省事務次官
新しい橋の整備に加えて、このプロジェクトではマライタ州で38キロの道路を対象に定期的な維持管理、路面補正、砂利の敷設作業の支援も行いました。この支援によって、2024年12月のプロジェクト終了時点で、対象道路が「良好」または「概ね良好」な状態に維持されたほか、道路の定期維持管理作業を通じ、プロジェクト期間中に延べ950人日分の地域雇用が創出されました。
また、SIRAPは、ウェスタン州に位置するムンダ国際空港の改修を実現する基盤を築きました。プロジェクトでは、新国際線・国内線ターミナルビルの建設への支援に加え、滑走路、誘導路、エプロンの気候変動への耐性を高める改修により、同空港で唯一の国際線の運航が再開されました。改修前の舗装は定期的なジェット機の運航に適していませんでした。
ムンダへの国際線の再開により、ソロモン諸島は、これまで異常気象の影響で運航に支障をきたすことがあったホニアラ国際空港を代替する新たな玄関口を確保するとともに、中長期的に、観光、貿易、ビジネスの分野で新たな機会を生み出しています。
SIRAPはムンダ国際空港の改修も支援しました。写真:世界銀行
長期的な持続性を確保するため、このプロジェクトでは、交通インフラ管理で重要な役割を担う通信航空省およびインフラ開発省の制度強化と能力向上も支援しました。一連の取り組みは、世界銀行と日本政府の共同イニシアチブである「質の高いインフラ投資(QII)パートナーシップ」の支援を受けて実施されました。また、以前、QIIの支援を受けて行われたプレハブ式モジュラー橋に関する評価を踏まえ、インフラ開発省は、このプロジェクトの一環としてマライタ州にモジュラー橋を建設することを決めました。
こうした成果を踏まえ、「ソロモン諸島における道路・航空プロジェクトフェーズ2(2022年~現在)」(SIRAP2)では、道路・空港インフラの災害や気候変動への対応力のさらなる強化に取り組んでいます。世界銀行が融資するこのプロジェクトを通じて、2029年までにホニアラを含む3か所の空港または飛行場に、災害に強く安全性を備えた滑走路が整備される予定です。さらに、マライタ州では、災害への対応力を高めた4つの橋梁と33キロメートルの道路が整備される予定です。
SIRAP2は、SIRAPと同様に、GFDRRによる技術支援を受けて実施されました。具体的には、GFDRRの「日本―世界銀行防災共同プログラム」による100万ドルのグラントを通じて、道路の中で特に重要な区間や災害に弱い箇所を特定するための評価を行うとともに、災害に強い道路網を整備するための戦略策定に向けた支援が実施されました。