Ahmet Kindap, Bontje Marie Zangerling, Salih Bugra Erdurmus, Silvia Malgioglio, Tugkan Tanir

イタリアとトルコは、食文化への親しみだけでなく、地震リスクと隣り合わせの地理的条件の面でも重なるところがあります。どちらも活発な断層帯の上に位置しており、こうした断層活動が地形や歴史のかたちに影響を与えてきました。ここ数十年においても、両国は深刻な地震被害を経験しています。トルコでは1999年のマルマラ地震や2023年のカフラマンマラシュ地震、イタリアでは2009年のラクイラ地震や2016年のイタリア中部地震が発生し、地域社会だけでなく、制度や組織のあり方にも長期的な影響を残してきました。

トルコで発生した直近の地震は、同国のレジリエンスを高めるとともに、建設慣行や制度・基準の運用のあり方、組織間での連携が喫緊の課題であることをあらためて気づかせるものとなりました。建築基準の強化にとどまらず、それらが確実に遵守される体制を整えること、役割と責任を明確にすること、そして安全性と品質を最優先とする説明責任の文化を社会に根付かせていくことが不可欠となっています。

こうした取組みを支援するため、トルコ政府は世界銀行支援の下、都市計画と建設に関する同国の法制度・制度的枠組みの現状評価を進めてきました。この評価は、ゾーニングや土地利用の慣行、トルコの建築耐震基準、建築検査制度など複数の側面を対象とするもので、とりわけ耐震安全基準を遵守し、建設全体の品質を向上させるための規制・運用面での能力強化に焦点を当ててきました。こうした評価を通じて、国際的なベストプラクティスを踏まえながら、現行制度における課題を明らかにし、改革をより確かなものにするための具体的な

提言の策定に取り組んできました。その一環として2025年7月、トルコ政府の関係者は防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)の資金支援のもと、技術的知見の共有を目的に、イタリアで視察を行いました。

トルコ代表団には、環境・都市・気候変動省、大統領府戦略予算局、保険・私的年金規制監督機関の代表者などが参加しました。5日間にわたり、ローマ、ラクイラ、パヴィア、ミラノにおいてイタリアの専門家と面会し、建築基準、基準等の遵守、震災後の復興に関する知見共有が行われました。

制度と復興体制の強化

トルコ代表団はローマにおいて、建築基準の策定や大規模インフラ事業の承認を担う国家機関である公共事業上級会議を訪問するとともに、イタリアにおける国家的な耐震レジリエンス強化の取組みを支えるフェデリコ2世ナポリ大学の著名な教授陣と意見交換を行いました。

ラクイラでは、ラクイラ市再建特別オフィス(USRA)とラクイラ市外地再建特別オフィス(USRC)の技術者から、同地域における復興の枠組みについて詳細な説明を受けました。その後、代表団は2009年の地震で被害を受けた市内各地を訪れ、公共・民間の建築物が革新的な工法や新しい技術を用いた補強や改修によって、どのように再建されてきたかを視察しました。

パヴィアでは、欧州における地震工学の主要な訓練・研究機関である欧州地震工学研究センター(EUCENTRE)の耐震研究所を訪問し、工学分野のイノベーションに関する先進的な研究について説明を受けました。

備えや保険、技術者資格制度などの役割

今回の訪問では、イタリアの防災の取組みが、幅広い制度的な枠組み全体によってどのように支えられているのかについても確認しました。ローマでは、国家レベルでの防災、事前の備え、緊急対応、復旧を統括するイタリア市民保護局と面会したほか、ミラノでは、地域当局が国家の制度をいかに補完し、迅速かつ統合的な緊急対応を確保しているかについて、ロンバルディア州の市民保護を担当する部署から説明を受けました。

さらに、基準等の遵守やリスク削減を促進する上での保険の役割も、重要なテーマの一つとして取り上げられました。イタリア保険監督庁とゼネラリ保険との意見交換では、建設保険や専門職賠償責任保険の仕組みが、安全基準の強化や財務面での備えにどのように貢献し得るかについて議論が行われました。

また、イタリアにおける技術者資格制度や規制の役割についても、代表団は訪問期間を通じて各所で意見交換を重ね、特にミラノ県技術者職能団体(Ordine degli Ingegneri della Provincia di Milano)とは詳細な議論を実施しました。

教訓を次の行動へ

一連の意見交換を通じて、専門職賠償責任保険の導入、建築基準策定を支える技術委員会の設置、専門技術者制度の強化、住宅建築物の耐震診断や簡易補強に向けた新技術の導入など、トルコが現在推進している改革アジェンダを前進させる上での多くの示唆が示されました。

イタリア訪問の成果をさらに深めるため、トルコからの訪問団は2025年9月、世界銀行の支援の下、日本の同分野における知見を共有するため、専門家を交えたフォローアップのオンライン知見共有を実施しました。そこでは建設監督制度、専門技術者基準、そして、耐震補強の実務に関して議論を深め、一貫した建築基準の適用と基準遵守に対する長期的な投資が災害リスクの着実な軽減につながるという日本の経験も共有されました。

トルコが今後改革を前進させていく上で、今回のイタリアと日本、そして他の地震リスクが高い国から得られる教訓は、レジリエンスが技術や投資だけではなく、各々の成功事例と失敗事例の双方から学び合う継続的なプロセスによって培われるものだという点です。世界銀行は、こうした世界各地の専門知識を結び付けることで、過去の災害から得られた教訓を、より安全で強靭、かつ持続可能な未来へとつなげる支援を行っています。

イタリア・インフラ運輸省内に設置された独立した技術機関である公共事業上級会議を訪問

写真:S. Malgioglio / 世界銀行

2009年の地震で深刻な被害を受けた、ラクイラ市内の民間住宅建設現場を視察

写真:S. Malgioglio / 世界銀行

パヴィアにあるEUCENTRE研究所。耐震工学の研究開発に用いられる地震振動台実験装置を備える。

写真:S. Malgioglio / 世界銀行