橋梁17本の再建を含めたインフラの強靭化によって、75万人以上(うち約半数は女性)が恩恵を受けたと推計されています。

中央アジアに位置し、急峻な山岳地帯を特徴とする内陸国のタジキスタンは、地震、洪水、地滑り、雪崩といった自然災害に対して非常に脆弱です。1992年から2016年の間に発生した災害によって、同国は累計18億ドルを超える経済的損失を被り、約700万人が影響を受けました。こうした災害による被害は、同国の開発進展への継続的な脅威となってきました。

過去の災害発生時には、道路や橋梁などのインフラ(多くがソビエト時代に建設)が影響を受け、住民や地域社会に甚大な被害をもたらしてきました。2015年7月には、タジキスタン山間の僻地において洪水と土石流が発生し、いくつもの橋梁が破壊され、主要な輸送路が遮断されたことで村々が孤立しました。

こうした状況を受け、タジキスタン政府は、防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)および世界銀行と連携し、総額5,000万ドル規模の「自然災害に対する重要インフラ強化プロジェクト」の枠組みの下、重要インフラの災害レジリエンス強化に取り組んできました。

このパートナーシッププロジェクトを通じたインフラの強靭化によって、75万人以上(うち約半数が女性)が恩恵を受けたと推計されています。

同支援の重点分野の一つは、2015年の洪水と土石流で交通インフラに深刻な被害を受けた山岳バダフシャン自治州における、橋梁17本の再建・強靭化です。橋梁の選定にあたっては、洪水や土石流による被害の程度に加え、地域のステークホルダーとの協議からのフィードバックも反映されました。

「これまでは車でチホフ村に行く手段がなかったため、病人を徒歩で隣村まで運び、そこから車で地区中心部の病院へ搬送していました。今では新しい橋が完成し、車両の通行も可能になりました。橋には歩道も整備されており、子どもなどの歩行者の安全も確保されています。」

―ゴルノ・バダフシャン自治州ヴァンジ地区チホフ村の小学校教員、ロジヤ氏

今回の再建・強靭化において、橋梁は高さの引き上げと長さの延伸が実施され、水位が上昇しても通行を維持できるように再設計されました。再建から4年が経過した現在でも、17本の橋梁はいずれも複数回の異常気象現象に耐えて機能を保持しており、こうした取り組みの有効性が示されています。

橋梁の再建・強靭化に加え、2015年の洪水や土石流で甚大な被害を受けたハトロン州では、洪水対策および河岸浸食防止のインフラ整備支援が実施されました。その結果、全壊または部分的に損壊していた堤防は、合計27キロメートル以上にわたり復旧されました。

GFDRRおよび世界銀行の支援は、タジキスタンのインフラセクターのレジリエンス強化のための革新的な工学的手法の導入にもつながっています。例えば、橋梁17本のうち1つにおいて、同国内で初めて「蛇籠(じゃかご)」を用いた補強堤防が採用されました。蛇籠とは、石などの耐久性のある材料が詰められた金網製の箱型の構造物のことで、橋梁に損傷が発生した場合でも、必要な箇所だけを迅速かつ的確に補修できる利点があります。

GFDRRおよび世界銀行は、タジキスタンとレジリエンス構築に関するパートナーシップを長年にわたって重ねており、重要インフラへの支援もその一環です。例えば、GFDRRが日本政府の資金的支援を受けて運営する「日本−世界銀行防災共同プログラム」を通じ、タジキスタンで災害が主要輸送路に与えた経済的影響の評価への支援も実施されました。公式統計、400世帯への調査および15名の主要関係者へのインタビューに基づく分析の結果、道路網における災害による総経済損失は、同国GDPの0.5%に相当すると推定されました。

さらにGFDRRは、「タジキスタン:2037年までの自然災害に対する財政保護戦略」の策定と採択にも支援を行いました。同戦略の柱には、災害対応にかかる費用を賄うための目的別予備基金の創設や、防災投資を促すインセンティブの導入などの改革案が含まれています。また、同国の危機管理および防災の中核的な調整機関である「非常事態・民間防衛委員会(CoESCD)」の能力強化にも支援が行われました。