モザンビークでは、サイクロン「イダイ」と「ケネス」後の復興支援により、4,300戸の住宅が自然災害への強靭性を高める形で再建・改修されました。このうち3,400戸は女性世帯主世帯向けのものです。
2019年、モザンビークは近年で最も壊滅的な災害の1つに直面しました。サイクロン「イダイ」と「ケネス」が相次いで同国を襲い、170万人以上が被災し、経済損失額は約30億ドルに上ると見積もられています。
中でも深刻な影響を受けたのは住宅を失った人々でした。約30万戸の住宅が損壊または全壊し、25万人以上が避難生活を強いられました。この大規模な被害は、同国の災害への脆弱性を浮き彫りにするとともに、将来の災害に備えた住宅の強靭化の必要性を明確に示しました。
このような状況を受けて、防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)と世界銀行は、モザンビーク政府と連携し、サイクロン「イダイ」および「ケネス」緊急復興・強靭化プロジェクト(CERRP)を通じた住宅の復興支援を開始しました(総額2億1,000万ドル)。この取り組みは、日本−世界銀行防災共同プログラムからの支援も受けています。
同支援の柱の一つとして、強靭な住宅に関する最新のベスト・プラクティスを、モザンビーク向けの詳細な住宅再建・改修マニュアルに反映したことが挙げられます。これは同国初の試みであり、住宅の損壊度合い、不動産の所有形態、さまざまなリスク軽減策の実行可能性などを考慮しながら、住宅設計者や建設業者に自然災害への強靭性を再建・改修する住宅に盛り込むための具体的なガイドラインを提供するものです。
同マニュアルは、国内外のNGOおよび国際移住機関(IOM)によって採用され、4,300戸の住宅の強靭性を高める再建・改修に適用されました。このうち3,400戸は女性世帯主世帯向けの住宅です。同再建・改修事業の実施にあたって、UN-Habitat(国連人間居住計画)により2,700人以上の地元の建設技能者が訓練・認定を受け、その後NGOや国際移住機関に雇用されました。また、同マニュアルが提供する住宅の強靭性を高める形での再建・改修手法に関する研修には、53,000人以上の地域住民が参加し、そのうち16,000人以上が女性でした。
GFDRRはまた、強靭な住宅建設に対する取り組みがサイクロン「イダイ」と「ケネス」の復旧支援時における一過性のものではなく、長期に渡って同国内で広く普及していくために、政府にとって何が必要かについてもさまざまな調査を行いました。
例えば、サイクロン「イダイ」と「ケネス」の経験が、ベイラ地域の住民に将来のサイクロンに備えるための行動様式の変化を促したかどうかを評価する調査が行われました。この調査では、強靭な住宅建設に対する取り組みの普及に向けた課題として、こうした取り組みに対する認識不足や限られた資金調達手段が指摘される一方で、国および地方自治体の支援により住宅の強靭化に対する一定の進展が見られることも明らかになりました。例えば、サイクロン発生後に地元で整備された排水システムが、ベイラ地域における住宅被害の軽減に大きく貢献したことが確認されています。
また同調査では、真に自然災害に対して強靭な地域社会を築くには、住宅の強靭化にとどまらず、より包括的な災害対策が必要であることも強調されました。例えば、早期警報システムを整備することで、地域住民が自然災害から自宅を守るための予防的措置を講じやすくなります。
GFDRRと世界銀行による強靭な住宅建設支援は、モザンビークとの包括的で変革的なパートナーシップの一部に過ぎません。このパートナーシップは、自然を活用した解決策、災害に強いインフラ、安全な学校づくり、緊急時の備えと対応など、多岐にわたる分野を対象としています。例えば、これまでの支援により、同国内で1,100の教室が強靭化改修され、13万2,000人以上の子どもたちが恩恵を受けています。
GFDRRと世界銀行のモザンビークに対する支援から得た知見が、同国および地域全体におけるレジリエンス強化の取り組みに反映され始めています。2025年4月には、モザンビークおよびマラウイの政府関係者がマプトで開催された技術ワークショップに参加し、GFDRRおよび世界銀行が過去10年以上にわたって蓄積してきた教育・保健インフラ分野における強靭な復興・改修に関する教訓について議論しました。このワークショップはUN-Habitatとのパートナーシップのもと実施され、日本の国際協力機構(JICA)職員も参加しました。