ウズベキスタンは、再生可能エネルギーの大幅な導入と、増大する電力需要に対応するためのエネルギーインフラの近代化を目指し、意欲的なエネルギー部門の改革の道を歩んでいます。しかし、日本と同様に、常に自然災害の脅威に直面しています。クリーンでレジリエンス(強靭性)も備えた電力システムをどのように構築できるのでしょうか。
この問いを探求するため、世界銀行は、防災グローバルファシリティ(GFDRR)が運営する東京防災ハブを通じて実施される「日本―世界銀行防災共同プログラム」からの資金支援を受け、2025年4月にウズベキスタンと日本の間でナレッジ交流を実施しました。1週間にわたり、ウズベキスタンの政策立案者や技術専門家たちは、日本の専門家や世界の専門家と共に、エネルギー分野の災害レジリエンスに関する技術的知見交換に参加しました。
「我々の国は中央アジアに位置し、水資源が限られ、内陸国であるため、消費者に水を供給するには安定した電力供給が不可欠です。私の主な任務は、日本が安定した電力供給を確保するためにどのように施設を建設しているかを学ぶことです。」ザファル・カリモフ氏(ウズベキスタン投資産業貿易省 国家保証プロジェクト調整局長)

[写真キャプション:東京電力パワーグリッドの中央給電指令所での質疑応答に積極的に参加するウズベキスタン代表団。クレジット:世界銀行]
市場改革という険しい道のりを進む
この意見交換では、日本が旧来の地域独占体制から、発電・送電・配電を分離し、市場原理に基づく電力システムへと移行した経緯を検証しました。早稲田大学の石井英雄教授は、この移行の複雑さを解説し、電力システム改革により効率性が促進した一方で、多くの複雑な問題と断片的な規制枠組みを生み出したと指摘しました。この経験は、自国の発送電分離改革に着手しているウズベキスタンの代表団にとって、非常に共感を呼ぶものでした。そこから得られた教訓は明確です。電力システム改革は不可欠ですが、成功例と課題の両方を含む国際的な教訓に学ぶ必要があります。
「私は、日本のほぼ完全に民営化され自由化されたエネルギー市場の各分野がいかに効率的に機能しているかを学びました。日本での経験から得た教訓は、ウズベキスタンが卸・小売電力市場への移行を進める上で、起こりうる失敗を避ける助けとなるでしょう。」バホディール・アモノフ氏(世界銀行ウズベキスタン事務所 エネルギー専門官)
経済産業省資源エネルギー庁との議論では、改革の推進役としての政府の役割がさらに強調されました。日本の閣議決定を経て国連気候変動枠組条約(UNFCCC)に提出された「日本の長期脱炭素戦略」、そして電力広域的運営推進機関(OCCTO)と資源エネルギー庁が専門家との審議を経て作成した「広域連系系統のマスタープラン」(2023年)は、クリーンエネルギー供給と大規模地震に対するレジリエンス向上という2つの目標を掲げ、2050年までのカーボンニュートラル達成を目指して策定されています。このマスタープランには、約6.0兆円から7.9兆円規模の系統増強投資が必要とされ、その費用は主に全国の電力消費者が負担します。これは、政府による資金調達の円滑化と幅広いステークホルダーの参加促進によって実現されます。
しなやかに、そして決して壊れない電力系統の構築
今回の技術的知見交換の大きな焦点は、電力インフラのレジリエンス向上でした。東京電力パワーグリッドや中部電力パワーグリッドといった日本の電力会社は、2011年の東日本大震災や2019年の台風15号(令和元年房総半島台風)など、大規模な災害から得た貴重な教訓を共有しました。電力会社が導入している積極的な対策には、地方自治体や自衛隊との合同訓練、ドローンを活用した設備点検などが含まれます。

[写真キャプション:飛騨変換所の操作について説明する中部電力パワーグリッドの洞浩幸専任課長(中央)。クレジット:世界銀行]
現地視察は、こうした概念をより具体的に理解する機会となりました。東京電力パワーグリッドの新豊洲地下変電所では、都内への安定的な電力供給を確保するため、地上での災害から保護された巨大な施設を視察しました。この設備の無人運転は、代表団に特に強い印象を与えました。同様に、飛騨変換所も代表団に深い感銘を与えました。東西日本の周波数差を管理するこの重要な交直連系設備は、豪雪などの極端な気象条件下でも耐えうる設計によって、そのレジリエンスを示しました。運用担当者からは、緊急時にも電力系統の安定性を維持するための自動送電切り替え機能などが紹介されました。
「今回の視察から、特に自然災害のような極端な状況に対応する方法について、非常に多くの有益な情報を得ることができました。また、エネルギーシステムの自動化についても多くのことを学ぶことができ、これは私たちにとって極めて有益であると確信しています。」シュフラット・ニザノフ氏(ウズベキスタン・エネルギー市場開発・規制庁 戦略計画・方法論・許認可課 シニアスペシャリスト)

[写真キャプション:ウズベキスタン代表団は飛騨変換所の直流送電線接続点を視察。クレジット:世界銀行]
レジリエンスを支えるデジタルツールもまた、重要な焦点となりました。中部電力パワーグリッドは、災害復旧情報共有システム(DRISS)やグリッド可視化システムといった高度なシステムを紹介しました。これらのツールは、広範なデータを活用して「デジタルツイン」、すなわち電力系統の仮想空間での複製を作成します。このデジタルツインにより、運用担当者は緊急時に迅速な被害状況の評価、シナリオ・シミュレーション、そして的確な意思決定を行うことが可能となり、復旧活動の迅速化と効率化が図られます。
再生可能エネルギーとスマート・テクノロジーで未来を拓く
ウズベキスタンは、2030年までに再生可能エネルギー比率54%という国家目標を掲げ、太陽光発電と風力発電の導入における課題を模索しています。今回のナレッジ交流では、変動する再生可能エネルギーの出力管理に対する日本の取り組みが紹介され、これには揚水発電による出力調整の活用やバッテリーエネルギー貯蔵システムの可能性が含まれていました。
早稲田大学では、参加者たちは仮想発電所(VPP)と分散型エネルギー資源(DERs)の集約に関する最先端の研究について学びました。これらは、分散型エネルギーシステム全体の電力利用を最適化する技術です。日本の高度計量インフラ(AMI)の展開規模は、7850万台を超えるスマートメーターの導入を誇り、デマンドレスポンス(DR)プログラムの実現やDERsの効率的な統合に必要な基盤となるデジタル層の重要性を示しました。これらはウズベキスタンにとって高い関心のある分野です。
経済産業省は、再生可能エネルギーに関する政策方針も共有しました。主な学びの一つは、出力抑制された再生可能エネルギー、すなわち発電されたものの電力系統に送電されなかった電力に対する日本のアプローチでした。日本の現行政策では、2021年頃に無制限・無補償の出力抑制ルールへ移行して以降、基本的に出力抑制による損失に対して生産者への補償は行われません。これは、発電量が需要に一致すべきであるという原則に基づくものであり、ウズベキスタンの市場ルールが進化し続ける上で貴重な示唆となりました。
レジリエントな未来のために連携強化
ウズベキスタン投資産業貿易省のザファル・カリモフ氏は、同国の急速な改革のペース、とりわけ2019年に国営の垂直統合型電力会社を分割することから始まった発送電分離プロセスを強調しました。また、彼はこの改革プロセス全体における世界銀行のリーダーシップと支援に謝意を表明しました。
ウズベキスタン代表団は、世界銀行のリーダーシップと日本からの惜しみない支援に対し、深い感謝の意を表明しました。経済産業省は、官民連携を通じてウズベキスタンのエネルギー転換を支援する日本のコミットメントを改めて表明し、ウズベキスタンの電力系統における日本の民間部門の関与分野を強調しました。

[写真キャプション:世界銀行東京防災ハブ主催のテクニカルセッションに参加したウズベキスタン代表団。クレジット:世界銀行]
結び
今回のナレッジ交流は、ウズベキスタン代表団に対し、自然災害に強靭で、高水準の再生可能エネルギーを統合できる電力システムを構築してきた日本の経験から得られた、実用的な知見を提供しました。深い議論を重視し、高度なインフラ、デジタルツール、そして政策アプローチに関する実例を示すことで、この交流は理論的な知識と実践的な応用との橋渡しをしました。今回のナレッジ交流は、今日の喫緊のエネルギー課題に取り組む上での国際協力の価値を明確に示すものです。